・骨粗鬆症 

 

骨粗鬆症とは、骨形成速度よりも骨吸収速度が高いことにより、骨に小さな穴が多発する症状をいう。

背中が曲がることに現れる骨の変形骨性の痛み、さらに骨折の原因となる。

骨折は一般に強い外力が加わった場合に起こるが、骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こす。
骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質(QOL) を著しく低くする。
骨粗鬆症は、中年以降に見られ、患者の8割は女性である。日本においては1000万人、アメリカ合衆国では3000万人に症状が現れていると考えられている。


骨は建築物に用いられる鉄骨などとは異なり、正常時は常に骨芽細胞と破骨細胞によって形成・吸収がバランスよく行われ、古い骨を壊し新しい骨を作り一定の量を保っている。
高齢の女性においては、性ホルモンの一種エストロゲンの産出量が閉経後に急速に低下する。エストロゲンには骨芽細胞の活動を高める作用があるため、閉経によって骨粗鬆症へと進みやすい。さらに女性は男性に比べてもともと骨量が少ないため、形成・吸収のバランスが崩れたときに、症状が表面化しやすい。

【分類】

骨粗鬆症は大きく原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分けられる。


●原発性骨粗鬆症
閉経や老化に伴い骨密度が低下するタイプのものであり、骨粗鬆症のほとんどは原発性である。閉経後骨粗鬆症では、更年期におけるエストロゲン分泌量の低下が原因となり、閉経後女性にエストロゲンを補充すると骨量の減少が抑制される。
また、老人性骨粗鬆症では、加齢に伴う腎機能の低下によって生じるビタミンDの産生低下がそれぞれ原因となる。男性では女性のように更年期で急速にエストロゲン産生量が低下して骨粗鬆症に陥るということはないが、加齢は骨量の減少要因の一つとなる。男性でも骨密度の低下と血中エストロゲン量には相関があることも示されている。
女性ではエストロゲンは卵巣で産生されるが、男性では卵巣がないため、類似の構造を持つテストステロン(男性ホルモン)から変換して産生する。テストステロン量が減少するためエストロゲン量も減少し、骨密度の低下につながると考えられている。
さらに、妊娠に伴う骨粗鬆症も原発性骨粗鬆症の一つとして数えられ、母体のカルシウムが胎児に移行してしまうことが原因である。


●続発性(二次性)骨粗鬆症
続発性骨粗鬆症とは
何らかの疾患のバックグラウンドの上に成り立つタイプのものである。
続発性骨粗鬆症の中にはさらに内分泌性、栄養性、薬物性(おもにステロイドによる)、不動性、先天性という細分類がある。

【要因】

主要因として知られる性ホルモン・加齢を含め、複合的に発生すると言われる。人種、体型、運動、喫煙、食事、アルコール摂取などが要因として知られる。
人種ではアフリカ系が骨粗鬆症を発症しにくい。運動の習慣がなくやせた体型、低い身長は危険因子の一つである。
骨形成に欠かせないカルシウムを不足させる動物性たんぱく過多の食事、ビタミンDの不足した食事、カフェインのとりすぎ、過剰なアルコール摂取は、食餌面における危険因子となる。喫煙は喫煙が骨密度を減らす。しくみによって危険因子となる。

骨粗鬆症を予防するには、これらの要因を除去する事、具体的には発症前の運動と食物の内容が重要である。


● カルシウム・パラドックス
2002年の世界保健機関(WHO)の報告書では、骨粗鬆症予防のための項目で、カルシウムの摂取量が多い国に骨折が多いというカルシウム・パラドックスの理由として、カルシウムの摂取量よりも、カルシウムを排出させる酸性の負荷をタンパク質がもたらすという悪影響のほうが指摘されている。
間接的作用としては、小腸からのカルシウム吸収の減少、ビタミンD不足、副腎皮質ホルモンや性ホルモン代謝の変化、非喫煙者よりも低い体重、非喫煙者よりも早い閉経、非喫煙者に比べて低い活動度などである。
これらの直接的・間接的影響によって、喫煙者は非喫煙者に比べて、オステオカルシンなどの骨形成マーカーが低く、骨粗鬆症をきたしやすいとされている。

【検査】

骨塩定量法はX線、超音波などを用いた方法が用いられている。一般病院では踵の骨量を測定する検査が普及している。しかし、高齢女性においては、二重エネルギーX線吸収法(DXA法)は骨折予測にあまり有用でないと、Archives of Internal Medicine誌(2007;167: 155-160)に掲載された。

【治療】

治療方法は性別によって異なる。
女性は、破骨細胞の活動を抑制するビスフォスフォネート系薬剤(第2世代薬アレンドロネートなど)、活性型ビタミンD、ビタミンK、カルシウム製剤の投与や、SERM・エストロゲンの投与が行われる。
男性はビスフォスフォネート、ビタミンD、ビタミンK、カルシウム製剤のみである。
しかし、エストロゲンの投与は乳癌の発生率を高める副作用がある。ラロキシフェンは閉経後女性にのみ有用である。

この中でビスフォスフォネート系薬剤(ボナロン 、ベネット 、アクトネルなど)とラロキシフェン(エビスタ )が、骨量を上げるエビデンスがあるため、第一選択薬になっている。(以前は活性型ビタミンD製剤)ビスフォスフォネート系薬剤は服用法が煩雑なのが欠点である。
毎朝、起床時(朝食前)にコップ1杯以上の水(180cc以上)で薬を飲み、服用後30分は食事を摂らず、横にもならないというものである。
一方、ラロキシフェン(エビスタ )は1日1回食事や時間に関係なく服用できるといったメリットがある。
近年、ビスフォスフォネート系骨粗鬆症治療薬の週一回服用型製剤が開発され、医療現場で普及している。
毎朝服用するタイプか週一回服用するタイプかの選択はコンプライアンスの良し悪しで決まる。
またFDAは大腿骨頸部骨折後の骨折予防にゾレドロン酸(ゾレンドロネート)の年1回静注を承認した。これは週一回よりもさらに簡便である。

 

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