・酸化・活性酸素/活性酸素の種類/抗酸化物質と酵素 

 

【酸化とは】

活性酸素の怖さをズバリ言えば、酸化です。
俗に宣伝的文句では「身体が錆びる」などの言い方をします。

酸化とは物が酸素と結合する働きのこと。
 化学的には電子が奪われることを酸化と言います

酸化の説明でよく使われている例としては、金属が徐々に錆びてきたり、真空パックの封を開いて酸素にさらすと魚や肉が早く腐ったり、リンゴの皮をむいて放置すると茶色く変色してくるなどの身近な例え。

これと同じように人間の体も酸化されて錆びると表現されています。 

 

酸化は酸素と結びつく化学反応であると共に、 分子から電子を奪う反応でもあります

 

活性酸素は一種類の物質ではなく、同じような性質を持った一群の仲間(活性酸素種)のことをいいますが、その共通の性質は、他の分子から電子を奪う性質が強いこと。』


例えば 酸素分子は、それぞれの酸素原子は8個(2個X4対)の電子に囲まれていて安定化されています(安定化とは分子にとって落ち着きがいい状態になること)。
これに対しスーパーオキシドラジカルには1個電子が足りませんので、常にまわりの分子から電子を奪い取ってやろうと狙っている状態。

これが『活性』酸素が悪者たるゆえんであり、細胞にダメージを与える原因になっているのです。


人間の体を形成する約60兆個の細胞その一つ一つが、体内に張り巡らされている血管を流れる血液から酸素と栄養分を受け取り、酸素の力を利用して栄養分を燃焼させる(酸化させる)ことによってエネルギーを得ます。

しかし、一方で酸化した(電子を奪われた)細胞は本来の役割を果たすことができず、結果として様々な病気を引き起こす原因にもなるのです。


【多すぎても少なすぎても困る活性酸素】
 活性酸素は私たちが酸素を利用して生きていく上で、必ず発生(生成)されるものであり 活性酸素は私たちの体を病原菌から守ってくれる大切な役割を持っています。

しかし、その一方で、過剰に発生した活性酸素は私たちの体内で暴れまわり他の物質と反応して細胞1つ1つの特性を変えると共に機能までも低下させ、破壊してしまうという、いわば『プラスとマイナスの要素を持っている』わけです。

通常の生活の中で絶えず生成され体内の抗酸化物質・抗酸化酵素によって消化される事の繰り返しであり、何らかの原因でバランスが狂ってしまった時に様々な障害を引き起こすのです。

バランスが狂う原因は、生活環境・生活習慣・遺伝など様々です。 過剰に作られた活性酸素は様々な病気の原因と言われており、病原菌だけでなく、正常な細胞までも攻撃し酸化させ、細胞内のDNAを傷つけることで人間にとって大切な遺伝子情報を書き換え、がん細胞を発生させる事もあると言われていますが、未だ研究段階。

他にも体内のコレステロールや中性脂肪という脂を酸化させることによって 過酸化脂質に変化させ、血管壁に付着することで血管そのものをもろくしたり、血管を塞ぐなどすることで「動脈硬化」や「脳梗塞」「心筋梗塞」などの原因にもなったりするのです。

※ 普通の酸素も、酸化させる力をもっていますが、活性酸素はこの酸化する力が非常に強いのです。
そして、私たちの生活する自然環境では酸化は起こりやすいといえます ※

 

では、活性酸素はどういうときにつくられるのでしょうか?

活性酸素を生み出す条件は、いろいろと考えられています。
 紫外線や放射線を浴びたとき
 有害な排煙を吸ったとき(車の排気ガス、工場の煤煙など)
 加工食品に含まれる食品添加物の摂取
 生鮮食料品に含まれる残留農薬を摂取
 体内に病原菌が侵入して過度の炎症を起こしたとき
 石油系化粧品を長期間使い続けている場合
 血液の流れが一時的に途絶え、再び元通りに流れたとき(再灌流)
 ストレスが蓄積されたとき
 タバコの吸いすぎ、酒の飲み過ぎ
 過度の運動をし、大量に酸素を消費したとき
 塩素が多量に含まれた水道水をそのまま飲料したとき

 


活性酸素/活性酸素の種類

 
 

【活性酸素とは】

一般に活性酸素とフリーラジカルは混同されることが多いのですが、活性酸素にはフリーラジカルとそうでないものがあります。
スーパーオキシドアニオンラジカルやヒドロキシルラジカルはフリーラジカルで、過酸化水素や一重項酸素はフリーラジカルではありません。

人間は酸素を吸い、それを利用して細胞内のミトコンドリアという器官でエネルギーを得て生きています。この過程で莫大な量のフリーラジカルが発生

※ フリーラジカルとは、不対電子、ペアになるべき相手を持たない電子を持つ分子または原子の総称です。こうした分子や原子はほかの物質とすぐに反応しようとしてラジカル(過激)な動きをするためにこのように呼ばれています。

活性酸素・フリーラジカルは生命を維持するために無くてはならないもので、
* 肺から取り込んだ酸素は赤血球中のヘモグロビンにより全身の細胞に運び込まれ、細胞中のミトコンドリアで酸素は糖質から電子を奪い、スーパーオキシド→過酸化水素→ヒドロキシラジカルを経て水になります。つまりこの反応中に酸素は何度か活性酸素・フリーラジカルに変わるのです。*

この過程をミトコンドリア電子伝達系といい、食事で摂取した糖質がこれによってアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギー物質に変わります。
しかし全ての活性酸素・フリーラジカルが水になる訳ではなく、余った活性酸素・フリーラジカルは細胞に損傷を与えるのです。
それを防ぐために各組織には抗酸化酵素と呼ばれる、活性酸素・フリーラジカルを消去あるいは除去する酵素が存在
その抗酸化酵素としてカタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、ペルオキシダーゼなど、活性酸素を無害化する酵素があります。
活性酸素は高い反応活性を持つため、外部から入り込んできた異物(微生物)を排除することが出来るのがわかってきています。
これらを応用して病気の治療や新薬の開発が期待されています。

白血球などの好中球やマクロファージが体内の異物や毒物を認識し取り込み分解することは知られていますが、この時に細菌などを分解するのに活性酸素が働いています。
体内で取り込まれた酸素から発生する活性酸素以外に外的な要因で発生する活性酸素もあります。

紫外線や放射線などが細胞に照射されると細胞内に活性酸素が発生するのが知られており、これを利用したものに、癌治療として放射線治療などが有名です。

その他、活性酸素は内因性に増殖の細胞内シグナルとして働く事が以前から知られています。
活性酸素は高い反応活性を持つため、外部から入り込んできた異物(微生物)を排除することが出来るのがわかってきています。

これらを応用して病気の治療や新薬の開発が期待されています。

白血球などの好中球やマクロファージが体内の異物や毒物を認識し取り込み分解することは知られていますが、この時に細菌などを分解するのに活性酸素が働いています。
体内で取り込まれた酸素から発生する活性酸素以外に外的な要因で発生する活性酸素もあります。

紫外線や放射線などが細胞に照射されると細胞内に活性酸素が発生するのが知られており、これを利用したものに、癌治療として放射線治療などが有名です。

その他、活性酸素は内因性に増殖の細胞内シグナルとして働く事が以前から知られています。
しみ、くすみなどの原因となるメラニンを増加させてしまうことが知られています。 


【活性酸素を知る上で注意すべきこと】

活性酸素の文字で検索をすると、様々な宣伝的文面が目につくと思います。
人々の不安を煽ったりするものが多く、「抗酸化物質を摂らなくちゃ」とばかりに、成分などもハッキリしないサプリメントやビタミン剤に飛びつく方も多くいます。しかし、抗酸化物質とよばれているものは「諸刃の剣」という事も考えねばなりません。

例えば抗酸化物質の一つであるビタミンC(アスコルビン酸)を例に説明してみましょう。
ビタミンC(アスコルビン酸)に活性酸素を消去する作用のあることは事実。
しかし反面、ビタミンC(アスコルビン酸)が活性酸素を還元するという反応は、同時に活性酸素がビタミンC(アスコルビン酸)を酸化するという反応を意味します
そして活性酸素がビタミンC(アスコルビン酸)を酸化すると、デヒドロ・アスコルビン酸がつくられることになりますが、このデヒドロ・アスコロビン酸が遺伝子に障害を与えることになるのです。
このような現象はビタミンCのみでなく他の抗酸化物質についても同様です。

なぜなら酸化と還元は常に同時に起きる反応だからです。


※ 人間の身体は正しい生活習慣をしていればバランスを保てるようになっています。いくら身体によい成分や物質だからといって、そればかり過剰に摂っていては、そのバランスは崩れ、必ず身体のどこかに変調をきたします。 

【主な活性酸素・フリーラジカル】

 

 スーパーオキシド
他の物質から奪った電子1個が酸素分子の片方に入り込んだタイプの活性酸素。

体内で初めに酸素分子から生成される活性酸素でもあります。
この活性酸素は、細胞内のミトコンドリアが酸素からエネルギーを作るとき(呼吸など)にできるもので、人間の体内で最も大量に発生するポピュラーなものですが、他の活性酸素に比べると反応性が低く人体に与える影響も少ない。
しかし、電子や水素原子のやりとりが進むと、ヒドロキシラジカルなど毒性の強い活性酸素に変化する可能性が高い。


 過酸化水素
酸素原子と2つと水素原子2つが結合してできた活性酸素の仲間で、殺菌剤「オキシドール」としてよく知られています。
酸化力は大きくないが、とても不安定で、わずかなきっかけで2つに分かれ、狂暴なヒドロキシラジカルになってしまう。

 一重項酸素
通常の酸素(三重項酸素)から電子が2つ欠けた状態で、安定しようと電子を強く求めるため非常に酸化力が強い。
そのため、次々と他の活性酸素に姿を変えていきます。
皮膚が紫外線にあたると皮下組織内でよく発生し、皮膚がんをはじめ多くの病気を引き起こす原因となります。


 ヒドロキシラジカル
酸素分子が分裂して互いに独立した2個の酸素原子となり各々が水素と結合したものです。
体内で酸素から直接生成されることはなく、スーパーオキシドや過酸化水素から発生します。
活性酸素の中で最も反応性と酸化力が強く、生活習慣病、がん、老化などを引き起こす主な原因と言われています。

 



抗酸化物質(スカベンジャー)と酵素

* 「抗酸化物質」は別名「スカベンジャー」と呼んでいます。
抗酸化物質の種類を形態の面から分類すると、酵素・タンパク質・生理的生産物・低分子化合物の四種類に区別されます。
また、抗酸化物質(スカベンジャー)によっては活性酸素の発生をおさえるのが得意なものや、発生した活性酸素を消去する力が強いものなど、様々な特性があります。

抗酸化物質(スカベンジャー)
 ・ビタミンC
 ・ビタミンE
 ・ベータ・カロチン
 ・ビタミンA
 ・グルタチオン

活性酸素を除去する酵素
 ・スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)
 ・カタラーゼ
 ・ペルオキシダーゼ
近年アメリカでは、食材や健康食品の抗酸化能力の指標としてORACを採用する傾向。

各種ビタミンによる抗酸化作用で酸化ストレスを抑制できる、と言われていましたが、
この定説を覆す研究が2006年Daniele Versari氏らによって報告されました。
それによれば、正常なブタに抗酸化ビタミンを投与すると、動脈壁における酸化ストレスを高め、心筋血流・内皮機能を損なうことが判明。

また、喫煙者によるβカロチンの過剰摂取は、癌や心血管死のリスクを増す可能性が指摘されています。(非喫煙者に対してはリスクが増す結果はあらわれていません)

抗酸化物質(スカベンジャー)は水溶性と脂溶性の2つに大きく分けられます。一般に、
水溶性抗酸化物質は細胞質基質と血漿中の酸化剤と反応し、脂溶性抗酸化物質は細胞膜の脂質過酸化反応を防止します。

これらの化合物は体内で生合成するか、食物からの摂取によって得られ、それぞれの抗酸化物質(スカベンジャー)は様々な濃度で体液や組織に存在。
グルタチオンやユビキノン(コエンザイムQ10)などは主に細胞内に存在しているのに対し、尿酸はより広範囲に分布。
稀少種でしか見られない抗酸化物質(スカベンジャー)もあり、それらは病原菌にとって重要であったり、毒性因子となったりします。


【細胞質基質(さいぼうしつきしつ)】

細胞質基質とは
細胞内の部分で、細胞質から細胞内小器官を除いた部分。細胞質ゾル、サイトゾルあるいは細胞礎質とも呼ばれます。
流動性の成分からなり、可溶性のタンパク質やリソソーム等が含まれており、基本的には水を溶媒とし、酵素蛋白質をおもな分散質とし(細胞質基質は20~30%の蛋白質を含む)、アミノ酸、脂肪酸などの各種有機酸、糖、核酸塩基、各種タンパク質を溶質あるいは低分子分散質として含みます。細胞内部の流体として、(主に細胞骨格の働きにより)原形質流動を起こし、細胞内の各種物質の移動、細胞内小器官の配置、細胞間で伝達される信号の細胞内での転送の場となっています。

 

典型的な細胞の模式図
(1) 核小体 (2) 細胞核 

(3) リボソーム (4) 小胞 

(5) 粗面小胞体

(6) ゴルジ体 

(7) 微小管 (8) 滑面小胞 

(9) ミトコンドリア

(10) 液胞

(11)細胞質基質
(12) リソソーム 
(13) 中心体

 

【抗酸化物質(スカベンジャー)を知る】


抗酸化物質(antioxidant)とは、他の物質の酸化を抑制する能力を持つ分子

酸化とは基質から酸化剤へ電子を転移させる化学反応のこと。酸化ではフリーラジカルを生成させることができます。
このフリーラジカルはラジカル連鎖反応を引き起こし、細胞に損傷を与えるのです。
抗酸化物質はフリーラジカル中間体を除去し、ラジカル連鎖反応を終了させ、他の酸化反応を抑制。このとき抗酸化物質自体は酸化するため、抗酸化物質はチオール、アスコルビン酸またはポリフェノール類のようにしばしば還元剤になります。

酸化反応は生命にとって極めて重要である反面、有害でもあります。そのため植物や動物はグルタチオン、ビタミンC、ビタミンE、酵素ではカタラーゼ、スーパーペルオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ類など様々な種類の抗酸化物質(スカベンジャー)の維持複合系を持ちます。
抗酸化物質(スカベンジャー)の濃度が低いとき、もしくは抗酸化酵素が阻害されたときはそれが酸化ストレスとなり、細胞損傷や細胞死の原因となるのです。

酸化ストレスはヒトの多くの病気の原因の一つであり、薬理学分野では抗酸化物質の研究が盛んに行われています。特に脳卒中、神経変性病の治療に対する研究が顕著ですが、それが酸化ストレスが原因なのかどうかは残念ながら不明です。
抗酸化物質(スカベンジャー)は栄養補助食品の成分として、健康維持や悪性腫瘍、冠状動脈性心臓病、高山病の予防の目的で広く用いられています。
しかしながら、初期の研究では抗酸化物質のサプリメントは健康を増進させる可能性があると提案されたが、後の臨床試験ではその効果が見つからず、むしろ過剰摂取による有害性が報告されています。